松 ノ 木 峠

東京都青梅市
2000.3.12

 松ノ木峠は鎌倉古道の峠の一つとして言い伝えられている。しかし地図(地形図、登山地図とも)上にはその姿はなく、そこには「松ノ木トンネル」があるだけである。稜線を乗っ越す峠は既に消失してしまったと思っていた。
 しかし、たまたま読んだ本に松ノ木峠の四体の石仏の事が書かれており、どうやら峠は現存しているらしいことがわかった。そして地図上には存在しない幻の峠に出かけてみることにした。


 成木街道の小ヶ井橋付近の林道入口の駐車帯に車をデポ。小雨の中、街道を北上し大指交差点を左折。そしてトンネル手前、グランド脇の小道を左に曲がり、集落の中を走る。
 直ぐに行き止まりになり、山道を登るようになる。堰堤工事の影響だろうか、道の状態は非常に悪い。勾配が激しくきつい上、あちこちが崩れている。最初、前進することを躊躇したほどだ。しかし極端にひどいのは最初だけで、そこをクリアすれば後の峠路の難度は低い。
 沢を遡るにつれ、道の状態は良くなってくる。そしていよいよ道は沢を離れ、山肌を九十九折れで駆け上っていくのだが、沢との分離点には石仏が鎮座していた。「これから道はきつくなるけど頑張れや。」とでも言っているようだ。ぺこんと頭を下げ、九十九折れに突入する。
 九十九折れに入っても勾配は大してきつくない。道の付き方も無理がなく、担いでいて、優しい(易しいではない)峠路だなと思った。古道の雰囲気がそこかしこに漂っている。空が広くなってきた。峠が近いぞ。
 峠に到着。稜線の鞍部を深く掘り下げた、古道峠によくあるタイプの峠だ。峠のUの字に身体を預け、しばし休憩。心地よい風を感じた。
 峠では四体の石仏が出迎えてくれた。こうして遙か昔から我々旅人を見守っていてくれたんだ。右から二基目の千手観音像は1698年に作られたもので、青梅市内最古の石仏だそうだ。時間があったので石仏の前でファイヤーガードで湯を沸かし、コーヒータイム。そう、実は今日は退院一周年記念日で、コーヒーが解禁の日なのです。うーん、やっぱりいいね。
 峠から南側に下る。中途半端な高さで道を塞いでいる大量の倒木にかなり苦労するが、それを除けば意外に思えるほど道形はしっかりしているし、勾配も緩い。歴史ある峠路の証だね。
 旧道と新道の南側の合流点。トンネルの直ぐ脇に出た。ガードレールでしっかりと道が塞がれている上、「松ノ木峠へ」と書かれた小さな小さな案内標識が一つあるだけ。最近毎週この道を車で通っているが、この道と案内標識には全く気がつかなかった。
 現在の松ノ木トンネル。青梅と秩父を結ぶ交通の要所だ。

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