楢  峠

−コースミスによる失敗−


1997.3.29

峠の位置

 楢峠は山梨県秋山村と都留市を結ぶ峠です。雛鶴峠のほぼ真北に位置し、大タビ山と高畑山の鞍部の峠です。

峠路の状況

秋山側から上る。途中まで林道が通っているが、その先は路がない。木の小枝につけられた赤いテープを目印に沢を遡る。 「沢筋の路」ではなく、「沢」を遡ったのである。枯れ沢ではなく、水が流れている。しかもかなりの急勾配で、幾度も滑落する。一枚岩なので、足場を探すのにも苦労する。
 自転車を先行させ、木やツタにハンドルやペダルを固定して、自分も少しずつ上っていく。

 分岐点が幾つかある。その度に小枝の赤いテープを目印に進む。斜度がどんどん増し、数メートル進むのに数十分もかかってしまう。休む場所を探すのにも苦労し、小さな木を見つけ、股で挟んで落ちないようにして休む。自転車もハンドルバーを木に引っかけて落ちないようにする。

 「コースミス」が頭をよぎるが、「ナラ沢峠へ」と書かれた赤いテープもあり、信じて進む。ついに沢がなくなり、激しい崖の直登となる。目の前に明るい稜線が見えるのだが、足がもう前に出ない。少し休んでは勢いをつけて一気に上り...これを数回繰り返して稜線上に立った。

 しかしそこは峠ではなかった。すぐ左側に山頂が見えたので「これはきっと大タビ山の主稜線で、この尾根を下れば峠に出る。」と思い込み、尾根を下った。相変わらず路も踏み跡もなかったが、やはり小枝に赤いテープがつけられていたので、このルートに疑いを持たなかった。
 その尾根もかなりの急勾配で、2,3回落ち葉で滑って転倒する。その度にからだと自転車をぶつけ、負傷する。水で傷口を洗っていたら、ついにボトルの水もなくなった。

 お尻で滑りながら進んでいくと。なんと尾根は行き止まりとなり、三方を崖で囲まれてしまった。崖下までは十メートル弱あり、岩がむき出しになっている。しかも形状から見てそこは峠ではない。「遭難」の2文字が頭をよぎる。
 山頂に登り返す体力ももはやなく、意を決して崖を降りることにした。まず自転車を落とす。ダメージが心配されたが、うまく落ち葉が下敷きとなり、スローモーションのように落ちていった。
 次いで自分が落ちる。足でブレーキしながら落ちていく、崖下直前で岩につまずきからだが宙に浮いたが、落ち葉がクッションとなり、怪我も軽くて済んだ。

 ここから進むべき路は1つしかない。ここにも赤いテープがついていたので、都留側の峠道に脱出できたと思った。再び苦労して沢を下る。自分も自転車ももう泥だらけだ。そして林道への取り付きを見つけ、道路にへたり込んだ。辺りを見渡すと、見覚えのある風景。数秒後に秋山側に戻ってしまったことを知った。

所要時間

林道終点を出発(9:30)−林道終点に戻る(14:40)
5時間10分

失敗要因

1.小枝の赤いテープに頼りすぎていた。
2.登山地図を信用しすぎて、自ら地形図を用意することを怠った。

 登山地図では秋山から峠への所用時間は45分となっていたため軽く考え、地形図を用意しませんでした。もし用意していたら、このようなコースミスはなかったと思います。
 本来道しるべとなるべき赤いテープですが、このテープの通りに進んでこのような結果になりました。明らかに間違っている尾根路にもテープがつけられていました。
パスハン行動の責任は自分に帰属します。間違ったテープをつけた人を責めるより、それに頼りすぎた行動をとった自分が責められるべきです。いかなる峠にでも地形図を用意し、 自分自身で判断して行動する、という当たり前のことを再認識しました。

帰還できた要因

1.早朝からの行動であったため、日没までに余裕があった。
2.非常食を多めに装備していた。
3.やけっぱちにならなかった。
 以上です。このコーナー、及びこの峠に実際に行かれた方、情報をお持ちの方のご連絡をお待ちしています。

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