背 あ ぶ り 峠


 延沢の集落の郵便局の駐車場にて車をデポする。3月とはいえ山形はまだ冬である。里には雪はないものの、身を切られるような寒さだ。セーターにヤッケ、手にはレイングローブの完全武装で走り始める。
 途中の民家は茅葺きの屋根が多く、「らしい」雰囲気をかもしだしている。田畑はまだ雪の下で眠っており、春の訪れがまだ遠いことを物語っている。
 峠路は勾配も緩く、道幅も広い。また、峠直前まで舗装されていて、しっかりと除雪もしてあるので走りやすい。のんびりと走って峠につく。峠はぐるっと山を巻いており、その部分だけが舗装になっていた。
 未舗装の区間は、反対側の楯岡側のほうがずっと長い。部分的に雪が残っているところもあったが、快適な下りであった。
 ところでこの峠路は、昔から延沢の人達が楯岡に出稼ぎに行くときに通った道である。出かけるときは東の空から朝日を、帰るときには西の空から夕日を背に受けたので、背あぶり峠というのだそうである。昔からの味が染みこんだ生活道路なのである。

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