大 峠


 天正13年(1585)、伊達正宗が開いたという米沢から喜多方に抜ける峠道だ。別名八谷街道とも言う。現在は国道121号線に組み込まれてはいるのだが、米沢側は未舗装だし、冬は通行止めになるしで、整備は不十分である。ただいま大峠バイパスが新しく作られている最中で、この道が旧道になってしまうのもそう遠いことではない。
 瀧上橋手前の非常駐車帯に車をデポする。寒い朝だった。水溜まりには氷が張っており、舗装された道全体がアイスバーンになっている。注意深くゆっくりと走り出す。この時期(11月25日)だともうとっくに冬期通行止期間である為、車に気がねする事なく走ることができる。自転車天国である。
 峠道は、さすがに国道だけあって勾配は緩く、アイスバーンにさえ気をつければはしりやすいのだが、周りの木々はすべて葉を落としており、寒々とした冬枯れの景色が続く。「大峠凾嶺越」の碑を越えて少し進むと未舗装になり、雪が少しずつ顔を見せ始め、おまけに霧までかかってきた。こういう時自動車が一台も通らないというのは非常に寂しい。気楽な自分だけの世界が、孤独な一人ぼっちの世界に転換してしまった。霧のかかった雪道を重苦しい気分のまま黙々と上る。
 峠はトンネルになっている。結構古めかしい造りで、照明設備も何もなく、周りの雰囲気にマッチして凄味を出していた。喜多方側の道は全線舗装の快適な下りであった。

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