小 滝 峠


 出羽国を縦断する羽州街道と上山でわけ、南進する米沢・板谷街道が内陸地方の本街道に当たるのに対して、この小滝街道は、山形−米沢間においてこれと並行する形の脇街道として栄えた。本街道が幕府や出羽国に居城を持つ諸藩が、順見使や参勤交代等の公私往来流通上の主要道路として利用し、整備されてきたのに対して、主として平時における地場産業上の道路、商業道路として公私の用を果たしてきたのが脇街道としての小滝街道の基本的正確であった。
 街道の歴史は古く、平安期末の西行の「山家和歌集」にも
          たぐひなき思ひいではの桜かな
              薄紅の花のにほひは
と、街道沿いの滝の山で詠んだとされる一首が残っている。
 現在では国道348号線に組みこまれており、道幅は狭く、急カーブが連続する山岳道路だが、きれいに舗装されている。私も仕事で南陽市方面に行ったとき、帰りは単調な国道13号線を避け、眠気覚ましにいつもこの路を通って山形に戻る。馴染み深い峠路なのだが、もちろん自転車で走るのは今回はじめてである。
 狸森に路上デポして走る。途中急勾配で山を駆け上がって行くところがあるが、後は交通量もさほどないのでのんびりと走れる。峠は浅い切り通しになっており、いかにも「峠」らしい。峠から少し上に行くと太神宮の祠もあり、古くからの峠路であることを思わせる。 峠から少し下ると堀っ立て小屋があり、木炭直売所と書かれてあった。いかにも雰囲気にあっているこの堀っ立て小屋は、その建物自体が木炭として売られてしまいそうで、なんともユーモラスな光景であった。
 現在、この峠の下にトンネルが掘られている。開通すれば一層交通量は減り、寂れてしまうだろうが、峠近くに集落があるため廃道になることはない。静かないい感じの峠道になって行くだろう。

目次に戻る