十 王 峠


 七五三掛の注連寺を見学した後、そのすぐ脇にある小道を登っていく。路はすぐ舗装が途切れて地道になる。勾配も結構きつい。パラボラアンテナのところまで出てくると展望がパッと広がり、月山が美しく見えた。
 ここで大きく右に曲がり、二股の道を左に曲がる。いきなり味もへったくれもないコンクリート道になるが、数十メートルだけである。
 美しい峠であった。山をきれいに二つに割った深い切り通しになっていて、急角度で山を乗っ越している。峠では二体のお地蔵様が出迎えてくれた。二体とも毛糸で作られた帽子とマントを身に付けていて、微笑ましい。
 振り返れば月山がそのなだらかな姿を横たえ、ずーっと目をおろすと直ぐ向こうに瀧水寺大日坊の境内がある。
 この十王峠には近年まで瀧水寺大日坊の十王堂という御堂があって、十王十躰と地蔵尊を祈り、松明の火で道を照らして迎え入れたという。
 そこの地蔵様は、今は大日坊境内地にあって、多くの信者を迎えている。
 この旧六十里越街道は、庄内と内陸を結ぶ道でもあった。
 鶴岡から松根を通り、十王峠を越え、塞ノ神峠、蟻腰峠、独鈷峠など、更に多くの峠を越えなければならない。
 やがて細越からざんげ坂に来て、湯殿山月山への参道と内陸への道との分岐となるこの十王峠はそれらの峠の一つである。

 月山から庄内平野に目を移すと、緑一色の田畑の向こうに青く光る水平線が見えた。やっと出会うことができた。

名前の由来: 鶴岡市を出た白衣の行人たちは、この道によってまず十王峠を越える。越えれば眼下に七五三掛の村があり、注連寺があります。十王とはあの世に逝くもの達を裁く王達のことであり、七五三掛のシメも注連寺も、共にシメ縄のシメです。すなわち、そこからはタブー、湯殿山の神域であることを示すのです。(「月山抄」森敦より)

ご注意 過去、この十王峠の記述に関しまして、峠のお地蔵様の問題を取り上げておりましたが、その際、七五三集落の言い分のみを取り上げ、大日坊の立場を無視しているとのご指摘を受けました。
 確かにその通りであるため、当該部分を削除し、加筆いたしました。本文第4段落途中から第9段落までは、ご指摘を頂いた大日坊副住職 遠藤祥成氏によるものです。関係各所にご迷惑をおかけし、申し訳ありませんでした。お詫びいたします。


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