船 引 峠


 はからずも独身時代最後の峠となった。
 萱平の池端の桜の木の下にデポする。お地蔵様にお参りして、南蔵王林道を走る。最初のうちは勾配も緩く、締まっていていい路であった。新緑が目に眩しく、鳥がさえずり、鼻唄の一つでも出てきそうな、そんな感じだった。
 高度を増すにつれ、路がどんどん荒れてきた。沢が路を横切り、土砂崩れによって路が消えているところもあった。自転車を担いで、慎重に突破する。
 峠直前で季節はずれの雪中行軍となるが、何とかクリアーして峠に立つ。峠からの上山側の景色はとてもよい。しかし凄まじく強い風が吹き荒れていて、草花は地にひれ伏し、大木も右に左に揺れ動いていた。自転車さえもしっかり掴んでいないと吹き飛ばされてしまいそうな感じであった。強風の中に立って上山を見下ろし、これから変わって行く自分の人生についてじっくりと考えてみた。

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