鳥 首 峠

埼玉県名栗村−秩父市
2000.2.19

周 辺 図 へ


 先週と同じく名郷の有料駐車場に車をデポ。早朝の名郷の街を峠に向かって走り始める。風が冷たい。写真右の道は先週走った山伏峠へ、左の道は妻坂、鳥首峠に通じている。
 緩い勾配の舗装道を、いつも通りギアを低くして速い回転で上っていく。と、目の前にいきなり「鋼管鉱業」の巨大な工場が現れる。ちょうど工場が峠道を塞いだ格好になっているので、施設の中の迂回路を通って峠路に取り付く。迂回路はちょっと複雑だが、わかりやすい案内板があるので、迷うことはないだろう。
 峠路の序盤は、モノレールのような変わった索道というか軌条を横目に上っていく。これは現在廃村になっている白岩集落の人達が、物資を荷上げするために作られた設備だそうだ。車道も通っていない所に住む人々にとって、これがライフラインだったんだろうね。でも今、白岩は廃村になってしまった。この軌条もただ朽ちていくだけなのだろう。
 廃村となった白岩集落にて。扉が閉まっている二つの祠、ほぼ完全な形で残っている四戸の家。意味のない電柱と電線、アンテナ....。もはや使う人のいない消火栓に、自転車を立てかけてしゃがみ込む。目を閉じると子供の遊ぶ姿が浮かんできそうだ。生きていくために山を下りたのはわかるが、こういった情景を見るのはやはり辛い。
 白岩の集落を過ぎると、白岩入に沿ってほぼフラットな優しい路がしばらく続く。やがて沢を詰め、山肌に取り付くのだが、その取り付きで路が消失している箇所が多い。また、設置されているロープを頼りによじ登っていく場所もある。路を見失いやすいので、小枝にくくりつけられた赤いテープを頼りに、慎重に登っていくこと。
 峠直下。いやらしいくらいに九十九折れが、これでもかと続く。勾配はかなりきつい。しかしここまで来ると空が明るくなり、稜線も見える。これに勇気づけられ、心臓が喉から飛び出しそうな位い息が荒かったが、ワンピッチで登っていった。
 峠に到着。自転車を案内板に立てかけるやいなや、そのまま地面に座り込んだ。峠の神様から冷たい風の贈り物をもらい、火照った身体を急速冷却。真上の青い空を眺めながら呼吸を整えた。
 峠は緩い鞍部に位置している。古いガイドブックには「峠には木の鳥居と祠がある。」と書かれているが、朽ちてしまったのか鳥居はすでになく、山の神を祀った祠と二つの案内板があるだけだった。ちなみに展望は両側ともあまり良くない。
 鳥首峠の名前の由来は二説ある。渡り鳥の通り道だったという「鳥窪峠」説と、昔、名栗からの落武者を、浦山の衆が待ち構えて首を取ったという「取首峠」説だ。異動の時期が近いというのに縁起でもない(^^;
 峠から浦山側への下り路は、暗い杉林の中。道の上に落ちてきた杉の枝が積み重なり、あまり経験したことのないような陰気で異様な感じ。あまり好きな雰囲気ではない。写真は廃村になった冠岩の集落跡。名栗村の白岩集落よりも狭いところだ。隠れ里と呼んだ方がふさわしいかも。
 冠岩集落の外れにあった祠には、お地蔵様と五輪塔と幾つかの石板があった。これらについてはこんな言い伝えがあるという。
 「その昔、落武者であろうか、この地にお堂を造ろうとした人たちがいた。ところがお堂の完成を前にして、彼らのうち十何人かが何者かに斬り殺されてしまった。板碑は、その供養として建てられたものであり、たたりを恐れて、今まで誰もこれに手をつけようとしなかったという。
  峠 秩父への道 大久根茂著 より」
 冠岩より更に山道を下り、簡単な橋を渡って林道に合流、荒れた林道を下っていく。三叉路から川俣に下らず、広河原逆川林道を南下、名栗湖に向かう。

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